2011年5月26日

rainy season




ちょっと早いけれど どうもありがと


2011年5月22日

いきなりだけれど、君はチビだ。
待ち合わせのときには君が見つからなくてイライラする。
話すときには僕は小腰をかがめないといけないし、
立ち見の映画館では後でさんざん文句を聞かされる。

君はチビだ。
人混みの中で、雨の中で、僕は君を見失いそうになる。
ハーモニーがどこかでずれるような夜、僕は君を見失いそうになる。
白昼の夢の中で君に会うとき、君を見失いそうになる。
夜のどこかで現実の君に会うとき、君を見失いそうになる。
追い討ちをかけるようだけれど、君はチビの上に性格が悪い。
大嘘つきで淫乱で独りよがりで怒りん坊で物欲のかたまりで
女々しくて責任感がなくて軽薄だ。
君が夜中にガチャンと叩きつけて切る電話のせいで、
僕は右の耳がおかしくなった。

僕が道路で君を待っているとき、君はもう誰かと別の街に行っていた。
君はナイフで僕の肉を、
ちょうど心臓のあたりをえぐりとると犬に投げ与えた。
君は夜の中では闇色の服を、光の中では光色の服を着てみせて、
手さぐりでうろたえる僕を見て楽しんだ。

君は無邪気な子供のふりをよそおっては、僕に無数の冬を投げつけた。
君は言葉のかわりに「痛み」を使って僕に話しかける。
そして「痛み」と「疲労」だけが僕の生きる力なのだ。
だからこうしてラブレターを書いている。
返事はいらない。





-  中島らも チビの女神さまへ